【天使の片翼】
カルレインが、立ち上がって窓を開けると、それを待っていたとばかりに、
風が、一気に部屋の中へとなだれ込んだ。
机に置かれた、決済を待つ書類たちが、その波に飲まれて、部屋のあちこちをさまよう。
ちっ、と舌打ちをして、カルレインは、腰をかがめた。
書類を拾いながら、
「風がな」
カルレインの低い声が、響く。
「必要だとは、思わないか?ああいう二人には」
リリティスが、虚をつかれたような顔になった。
「まぁ!
では、ファラを、ホウト国へ嫁がせるおつもりでは、ないのですね?」
一緒になって、書類を拾い集めるリリティスの手が、止まる。
まさか、そんな深い考えがあったなんて、思いもしなかった。
カルレインは、きちんと、ファラの幸せを考えてくれていたというのに、
疑ってしまった自分が恥ずかしい。
リリティスが、笑顔になりかけたとき、カルレインの否定の言葉が、飛んできた。