【天使の片翼】
「いや、嫁がせないと、決めているわけではない」
自分の言葉に、首をかしげたリリティスを見て、カルレインは、補足した。
「それは、ファラに選ばせようと思っている。
自分の目で見て、感じて、決断してもらう。
どれが、自分の愛する男なのか、をな。
もしも、ファラが、ホウト国の王子が良いというなら、もちろん嫁がせる。
ホウト国との親交が深まるのは、わが国にとっても、ありがたいことだ。
反対する理由はない」
政略結婚が、目的ではないとはいえ、そうなったからといって、悪いことなど何もない。
むしろ、カナン国にとっては、いいことづくめだ。
・・ホウト国との外交は、いろいろと問題が、山積みだからな。
リリティスの不安も、王子だか王女だかが、大勢いることではなく、
本当は、そこにあるに違いない。
カルレインは、そのことをわかってはいたが、あえて触れるつもりはなかった。
「まぁ、どちらにしても、幼馴染の立場を失うのが怖くて、好きな女に、告白も出来ないような男には、
ファラの夫になる資格は、ないがな」
カルレインは、いかにも意地の悪い笑みを浮かべて、にやにやと笑っている。