【天使の片翼】
うっかりと、油断を誘われる表裏のなさげな顔。
しかし、エリシオンは、父の忠告を無視したりはしなかった。
「素晴らしいですね。ルビド王は、お幸せです。
こんな豊かな国に、腕の立つ兵士。それに・・」
と言いながら、大勢の美しい女たちが座っている席に、目を向ける。
「ホウト国は、美女の産地でもあるのですね。
真に、うらやましいことです」
エリシオンの言葉に、ルビドは、急にウホウホと、笑い始め、早口でまくしたてる。
「いやぁ、参りましたな。実は今度、14人目の妻を迎えることになりましてな」
ぺらぺらと自慢げに語るルビドに、エリシオンは、適当に相槌を打っった。
・・なるほど。
女の話以外はどこに本音があるかわからない、狸じじい、ね。
エリシオンは、ホウトの王族は全て腹黒の商人と思え、
という父の言葉を体感して、なるほどと納得した。
笑顔の裏にあるもののことを、常に頭の中に入れておく必要がある。