【天使の片翼】
集め終わった書類を、カルレインに手渡しながら、リリティスは、自分の夫を軽くにらみつけた。
「なんだ?何か問題か?」
茶化すような言い方に、リリティスは、むっとする。
それでは、ソランがかわいそうだわ。
ソランは、マーズレンと、ルシルの子供なのに。
長年、カルレインの護衛を務めている男と、
同じように自分の侍女を務めてくれている女の間に出来た子供。
その子供に対して、夫の態度は、あまりに冷たく感じる。
ひょっとしたら、自分の身分に遠慮して、告白できないでいるのかもしれないのに。
リリティスは、無言で踵を返そうとして、カルレインに手首を拘束された。
そのまま、体ごと腰を引き寄せられて、お互いの距離が隙間なくつめられる。
「愛してる、リリティス」
なんの脈絡もない、突然の告白に、リリティスは、年甲斐もなく、耳まで桃色に染まった。
「と、突然、何を・・・」
リリティスのうろたえる様子を見て、カルレインは、満足げに微笑む。
いくつになっても、まるで、少女のような自分の妻。