【天使の片翼】

ルビド王に笑いかけた刹那、エリシオンは、すさまじい殺気を感じて、

思わず腰に手をやり、身構えた。



・・誰だ!



殺気を感じた方角には、二人しかいない。

今から剣の試合をする、頭(こうべ)をたれた二人だけ。


その二人は、頭を上げると、何事もなかったかのように試合を始めるべく、

お互い向き合い、一礼をする。



・・なんなんだ?!



背筋に、嫌な汗が流れ落ちるのを感じ、エリシオンは、息を詰めた。


「どうか、なさいましたか?」


エリシオンの緊張に気づいたのか、侍女が酒を注ぐ手をとめて、話しかける。


「いえ、なんでもありません」


笑って返事をしたつもりだが、頬が引きつっているのが、自分でも良く分かった。




< 150 / 477 >

この作品をシェア

pagetop