【天使の片翼】
ルビド王に笑いかけた刹那、エリシオンは、すさまじい殺気を感じて、
思わず腰に手をやり、身構えた。
・・誰だ!
殺気を感じた方角には、二人しかいない。
今から剣の試合をする、頭(こうべ)をたれた二人だけ。
その二人は、頭を上げると、何事もなかったかのように試合を始めるべく、
お互い向き合い、一礼をする。
・・なんなんだ?!
背筋に、嫌な汗が流れ落ちるのを感じ、エリシオンは、息を詰めた。
「どうか、なさいましたか?」
エリシオンの緊張に気づいたのか、侍女が酒を注ぐ手をとめて、話しかける。
「いえ、なんでもありません」
笑って返事をしたつもりだが、頬が引きつっているのが、自分でも良く分かった。