【天使の片翼】

太陽が、もっとも高い位置から、地面に集う人間たちを見下ろす頃、

暖かい恵み以上のものが、もたらされる。

熱波。


昼過ぎに始まった御前試合は、すでに後半にさしかかり、

人々の熱気とあいまって、恐ろしいほどの熱を生み出していた。



・・暑い。

どうして、こんな暑いのに、試合なんかやるのかしら。



侍女のレリーから聞いた話では、炎天下の中で試合をするのは、

騎士の精神力が試されるとかで、よく行われるのだそうだ。


確かに、有事ともなれば、重い防具を身にまとって、

かなりな暑さを、耐え忍ばなくてはならないのだろう。


王族や、貴族たちは、みな天幕が張られた中にいるため、

直接光をあびることもなく、飲み物も次から次へと運ばれ、さほどの打撃はない。


しかし、一般の兵士はもちろん、この試合を見る事を許された、幸運な民たちには、

真昼の光線が、容赦なくそそがれている。



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