【天使の片翼】
シド様素敵~!という、黄色い声があがったところをみると、
どうやら、シドが勝利したらしい。
・・やっぱり、シドって強いんだな。
ファラはソードから離れ、会場を振り返る。
シドが一礼して、声援にこたえるように手を振っているのが見えた。
ここからは、背中しか見えないが、顔は見なくても想像がつく。
どうせ、さわやかを前面に打ち出した、いやらしい顔をしているにきまってる。
誰にでもそういう顔をするから、女たちがしなだれて寄りかかってくるに違いない。
ファラの近くにいる侍女たちが彼を見る目は、みんなうっとりとしていて、
ファラは、なんだかちっともおもしろくなかった。
・・ん?なんで、腹がたつのかしら?
理由はわからないが、なんだか胃の辺りがむかむかと重い。
この感じは、以前にもどこかで経験したことがある。
ずっと、幼い頃。
ファラが、過去の記憶を手繰り寄せている時、突然背後からガタンという激しい音がして、
侍女が、きゃっ!、と短い悲鳴を上げた。