【天使の片翼】
・・なんだ?冷たくて、気持ちがいい。
かあさ、ん?
母が、こんな風に、自分の枕元にいてくれたことがあったろうか。
たんなる夢か幻影か、それとも、忘却のかなたに追いやってしまった記憶の中から、
都合のいい思い出を、呼び覚ましたのか。
自分の額に触れた、優しい手の持ち主。
それを確認して、夢から醒めれば、気落ちするかもしれない。
ぼんやりとそんな事を考えながら、ソードは、うっすらと瞼を開いた。
「あ、気がついた!」
嬉しそうな声で笑っている少女が、一人。
侍女でもなければ、シドなんかでは、決してない。
急速に覚醒する意識の中で、ソードは、これが夢ではないことを悟った。
夢ならば、いくらかましだったろうに。