【天使の片翼】
部屋ごと炎であぶられたような熱気は、あいかわらずで、自然発火でもしそうだ。
上体を起こしたソードの額から、手ぬぐいが寝台へと滑り落ちる。
手ぬぐいがあっという間に熱くなるのは、ソードの体温のせいなのか、
それとも部屋の暑さのせいなのか。
ファラは、それを拾うと、再び水の中に沈めた。
「御前試合・・・」
ソードは、途切れ途切れの記憶の小片を、なんとか繋ぎ合わせて、つぶやいた。
そう、確か、エリシオンの姿を追っていたら、シドの試合が始まって。
・・それから、どうした?
奥深くから、何かがはじけとぶような、ずきんとした痛みが、ソードの頭を襲う。
「ぐっ!」
思わず漏れたうめき声を、当然ファラは拾い上げた。
「大丈夫?
まだ寝てた方がいいわ。ほら、横になって」
ソードが、おとなしくファラの言う事を聞いて、体を横たえる。
どうせ憎まれ口を叩くのだろうと覚悟していたファラは、拍子抜けした。
やはり、体が辛いのかもしれない。