【天使の片翼】

本当はね、と前置きしてから、ファラは、ふふ、と微笑んだ。


「ソランの試合が見たかったから、

あんたのことなんて、放っておこうと思ったんだけど」


薄緑の透き通るような瞳は、自分の心の奥まで覗き込んできたような気がして。

ファラは思わず、言うつもりのなかったことまで口にした。


「さっきさ、ソードってば、ルビド王と私の兄様のこと、じっと見てたでしょ?

その時、なんか、

“自分はここにいるよ!”

って、訴えるような顔してたから」


だから、なんとなく、傍についてあげたくなったの、とファラは照れたように舌を出した。


「なっ!」


理解できない。

この女は、やはり、頭が弱いんじゃないのか。


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