【天使の片翼】
「王の護衛を務めているモウカが、1位。
これは、暗黙の了解で、決まっていることだ。
その下は、実力主義といいたいところだが、そうはいかない。
王子は9人いるからな。
第一王子の護衛から、順番に順位を譲ることになる。
だから、第九王子の僕についているシドは、10位ってわけだ。
お前の護衛がそれより上に設定されてれば、さらに順位が下がるがな」
当然と言ったような、シドの口調。
「うっそ!!それって、前もって示し合わせた通りに勝負をつけるってこと?
いんちきじゃないの!」
「だから、そう言ってるだろう。
祝いの席で、真剣に勝負なんかしてみろ。
あとで、どんな仕返しが来るかわからない」
本当?といまだ半信半疑で、ファラは口をへの字に曲げると、腕組みをした。
「それじゃあ、なんのために御前試合なんかするの?」
ソードが嘘を言っているようには見えないが、
実力を発揮できないなら、この暑い日中に、わざわざそんな事をする理由が思いつかない。
ファラが、かわいい顔に似合わないしわを、眉間に寄せると、シドの顔がふっと緩んだ。