【天使の片翼】
ソードに何か飲ませたいのだけど、と侍女に話しかけると、
彼女らは、気まずそうな顔で、お互いに見つめあった。
その様子は、どう贔屓目に見ても、忙しいから行けないというよりは、
お互いに、あなたがいきなさいよ、と押し付けあっているようにとれて。
ファラは、自分がやるから、と、その場においてあった水差しと椀を手に、
彼の部屋へと舞い戻ってきたのだった。
そのことを、ソードに伝えることはできなくて。
「ねぇ、ソードってば!せっかく運んできたんだから、お水、飲んでよ」
ただ、ソードに、自分ができる精一杯の事を、してあげたかった。
何度もしつこく肩を揺すると、わずらわしいのを、何とか堪えていたのだろう。
我慢しきれず、とうとうソードが、溜まった怒りを爆発させた。
「いいかげんにしろ!
僕は、お前が汲んできた水など、飲めない!
どうせ、毒でも入ってるんだろう!」