【天使の片翼】
「言葉には、力が宿るんだよ。
死ねばいいなんて、そんなこと、絶対に言ったらだめなんだから」
惜しげもなく、ファラは次々に涙をこぼす。
初めて見るファラの涙が、ソードには、なぜだか宝石のように輝いて見えた。
「・・・・・・」
宮殿にいる大勢の王族や貴族や、侍女相手になら、
何も考えなくてもいくらでも気の利いた、やさしい言葉が、舌を滑り降りてくるのに。
ソードは、目の前で泣き出したファラに、なんと声をかけてよいのか、わからなかった。
頭の中が真っ白で、いままで蓄えていた型どおりの慰めの言葉が、引き出しから出てこない。
かけた覚えのない鍵が、かかったまま壊れてしまったかのようだ。
「みず・・・」
やっとのことで、目の前にある物質の名前を口にする。
「飲む」
幼子のように、単語の切れ端しか言葉にできないが、
ファラは、はっとしたように、反応した。