【天使の片翼】
別の椀に手早く水を注ぐと、ファラは、はい、とそれを差し出す。
受け取る瞬間、自分の手にファラの手が触れて、ソードはぎくりと体を強張らせた。
しまった、と思ったときには、すでに遅かった。
受け取り損ねた椀が、無常にも自分の衣を水浸しにする。
「やだ!ごめん!」
ファラは、懐から手巾を取り出すと、急いでソードの衣を拭きはじめた。
体を触られるなんて、毎日のように侍女にされていることなのに、
なぜかソードは、顔が熱くなるのを感じた。
調子が悪いせいかとも思ったが、何かが違う。
「だめだわ。それ、脱いで」
「え?」
「着替え、どこにあるかわかる?」
「そこの隣の部屋に置いてあるはずだ。多分」
言い終える前に、ファラは隣の部屋から、着替えを物色してきた。
「ちょうどいいわ。もっとゆったりとした、寝やすいものに着替えて」