【天使の片翼】
僕は、と言ってから、ソードは迷った。
自分の話などすれば、弱みを握られるだけではないか。
けれど。
「僕は小さい頃両親が死んで、後見がいなかったから父上が養子として拾ってくれた。
父上には百人を超す子供がいるから、役に立たなければ見捨てられる。
だから・・・。
だから、お前の言いたい事、ちょっとだけ、わかる」
自分が言い終わったとたん、ファラがはっとしたように自分を見た。
光線の加減で、ちょうど目元が陰になり、どんな顔をしているのかがわからない。
・・やっぱり、言うべきじゃなかった。
沈黙に耐え切れなくなりかけた頃、ファラのかわいい唇が、小さく動いた。
「ありがとう」
何に対する礼なのか、さっぱりわからない。
けれど、ソードは、うん、と口にした。
頭が指示したのではなく、口が勝手にそう答えた--。