【天使の片翼】
緑の葉、一枚一枚が、人の大きさくらいありそうな、大木カリプタスの下は、
その大きさに見合った、巨大な影と冷風をもたらす。
部屋に面したそこは、木の床が張られ、部屋とも庭ともつかぬような、どくとくの雰囲気をかもし出している。
同じく木でできた机と椅子が、無造作においてあり、
ファラは、素足のままでそこに降り、お茶を飲むのがお気に入りだ。
彼女の好きなものに付き合わされた兄は、やれやれ、といったように手を引かれ、
同じように裸足になる事を強要されていた。
「ファラ。君は、ここに何しに来たんだい?」
確か、花嫁修業とか、見合いとかいう話だったと思うんだけど、と付け加えると、
耳ざとい侍女が、その台詞を耳にして、すぐに後ろを向いた。
肩が震えているのは、寒い・・訳はなく、笑っているのだろう。
木の床は張られていても、室内ではない。
当然のように、皆、室内履きとは別の、布でできた靴を履いている。
「もちろんわかってるわ!
ソード王子と親交を深め、お互いに愛し合って結婚するためだわ」
ファラは、拳を天に突き上げて高らかに宣言した。