【天使の片翼】
・・私って、やっぱり嫌われてるのかな。
こんなんで結婚なんて、できるのかしら。
半年の見合い期間のうち、すでに一ヶ月が過ぎようとしているが、
いっこうに親交が深まったとはいえない。
むしろ、ますます喧嘩をする土壌が整ったといえそうだ。
このままお互いがうまくいかなそうと判断されれば、破談になるはずだが。
傍目には、仲むつまじく見えるので、
侍女たちの間では、結婚が決まったかのような扱いを受けている。
「ねぇ、兄様。兄様は、愛って何だと思う?」
ぶっ、とエリシオンはお茶を吹きだした。
まったく、この妹は、突然何を言い出すのか。
つい今しがた、試合の話をふってきたばかりだというのに。
「あ、愛?」
「あのね、父様と母様は、お互いに愛し合って結婚したって、そう言ってたわ。
父様は、私を政略結婚させるつもりのくせに、愛し合って結婚してほしいって、
そうおっしゃったのよ。
けど・・・」
そのまま、ファラは、目を伏せる。
「私、愛ってなんなのか、わからなくなっちゃったの」