【天使の片翼】
エリシオンが、ファラの問いの答えに窮しているのと、ちょうど同じ頃、
彼らの母親は、美しい銀髪を揺らしながら、寝台から身を起こしていた。
・・いいかげん寝てばかりでは、かえって体に悪いわ。
体に負担をかけないように、静かに寝台から立ち上がると、
近くに控えていた侍女が、飛んできて彼女の手を取った。
「リリティス様。大丈夫でございますか?」
侍女は、リリティスの体を支えると、椅子に腰掛けさせる。
「大丈夫よ、ルシル。そんなに過保護にしないでも」
リリティスが柔らかく微笑むと、ルシルは心配そうに眉根を寄せた。
「ですが、リリティス様はすぐに無理をなさるから。
確かにカルレイン様の過保護ぶりは、度を越してますけどね」
ルシルの言葉に、二人は顔を見合わせて苦笑する。
確かに、カルレインの心配ぶりは、酷いものだ。
リリティスのやるすべてのことに、こうしろ、ああしろと、口を挟んでくる。
そのうち、リリティスを寝台の上にはりつけておく様に命令するのではないか。