【天使の片翼】



・・どうやら、取り越し苦労だわ。



倒れたりすれば一大事だと、内心はらはらしていたルシルは、

リリティスの楽しそうな様子に、自然と顔がほころぶ。


リリティスは無邪気な様子で、咲いている花に手を伸ばした。


「まぁ、この花も満開だわ。いい匂い・・っ!」


「リリティス様!」


突然、リリティスは顔をゆがめ、苦しそうに口元に手をやり、うずくまる。



・・いけない。匂いにあたったのだわ。



すぐにそう察したルシルは、リリティスの背中を撫でながら、言葉をかけた。


「やはり、寝台に戻りましょう。無理をすれば、またいつかの二の舞になります。

このまま、ここでお待ちください。すぐに人を呼んで参りますから」


そう言って、ルシルがその場を離れようとしたとき、

黒い影が彼女の行く手を阻んだ--。




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