【天使の片翼】

昼下がり、侍女の格好をした少女は、照りつける太陽の陽射しにさらされたまま、

その部屋に続く廊下を、うろうろと行ったりきたりしていた。


細い手には、どこかで摘んできたのだろう。

かわいらしい薄い桃色の花が、数本、大事そうに握られている。


しばらくそうしていたが、意を決したように近づくと、

一つの部屋の前で立ち止まった。


他のどの場所とも違い、格段に日光の当たる部屋だ。



・・ソード様。

元気になられて良かった。

これ、お見舞いです。



少女は、きょろきょろと首をめぐらせて、周囲に誰もいないことを確認すると、

花束を、そっと床に置き、ほぉっ、と息を吐いた。


可憐なその花は、ずっと昔、ソードが自分に似て、かわいいと言ってくれた花だ。

それを覚えているとは、思えないけれど。


花以上に、ずっと可憐なその少女は、瞳を閉じてソードの健康を祈った。


大好きな、幼馴染の健康を。








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