【天使の片翼】
うっすらと面紗がかかったように、藍色の空が天を覆いつくすと、
同じ大気に包まれているとは思えぬほど、一気に気温が低下する。
ずいぶんと慣れたが、ファラも最初は、この変化に戸惑うことが多かった。
体に羽織った薄布を引き寄せると、そろそろ気温が下がってきましたね、と言いながら、
侍女のレリーが、窓を閉めてくれた。
薄着の割には、どうしていつも体を薄布で覆っているのかと、疑問に思っていたが、
昼間は日光をさえぎり、夜は冷気を遮ってくれる。
一度使ってみると、なるほどこの布は、非常に便利でありがたい。
「ねぇ、レリー。
レリーには、愛している人はいる?」
二人きりになったところで、ファラは、またしても唐突な質問を繰りかえした。
「どうなさったのですか、急に?」
当然レリーは、ファラの疑問に答えるよりも前に、感じた疑問を口にする。
最近のファラは、誰彼となく、同じような質問をして人々を面食らわせていた。