【天使の片翼】
ちくしょう、どうしてこんなことになるんだ!
刃物が地面に転がる音が、一瞬で、暗闇に溶けていく。
ひっそりと静まり返った闇夜の中で、
一人の少年が、興奮状態になって、金切り声をあげた。
腕には、血まみれの、少女の体を抱え込み。
たった、一瞬前まで、幸福になれると思っていた。
自分には手の届かない、幻だと思っていたもの。
やっと、それを手に入れたと思ったら、なぜ、こんな悲しい別れが訪れるのか。
復讐してやる。少年は、低く呟いた。
やられたまんまなど、ごめんだ。
立場の弱い自分たちにだって、心があるのだということを、連中に思い知らせてやる。
少年は、復讐を、口にすると、心を閉ざした。もう二度と、誰も愛さない。
こんな哀しく、狂おしい思いをしなくては、ならないのなら。
目を閉じ、耳を塞ぎ、口をつぐみ・・・。
最後に、心を閉ざしたとき、自分の頬を、熱い涙が伝った。
・・ごめんね。こんなこと、優しい君が、望むはずないな。
許してもらえないのは、わかっている。それでも・・・。
・・これが、僕の、君への愛だ。
やがて、時が流れても、彼の深い想いは消え去ることはなかった--。