【天使の片翼】
それがね、とファラはエリシオンに相談した内容を、そのままレリーに預ける。
「私ね、ソードのこと、愛せるって思ってたの。
仲良くしてれば、そのうちいやいやじゃなく、結婚できるくらいになるだろうって」
初対面で、いきなり好きになれと言うのは無茶かもしれないが、
婚約者として、心を砕いていれば、そのうち愛が芽生えてくるのだと、そう信じてた。
のだが。
「最近、ソードとも、だいぶ仲良くなれたような気がするのよ。
ちょっとだけ、彼の事を理解したような気もするし。けどね」
そこで、ファラは言葉を切ると、露台へ向かって歩き出した。
そっと窓に触れると、ひんやりとした温度が、指先を伝って流れ込んでくる。
「それって、なんだか男女の愛っていうものとは、ちょっと違うような気がして」
他の侍女たちには、ここまで腹を割って話をしたりはしなかったが、
レリーは、自分と年が近いせいもあり、ファラは彼女と意見を交換したかった。
ソードを呼び捨てにしたことに、一瞬だけ見せたレリーの動揺。
心がはやっていたからか、ファラはそれに気づかなかった。