【天使の片翼】
「私ね、ソードと同い年の弟がいるの。
多分、ソードに対して持ってるのは、そういう感情、だと思う。
それって、やっぱり、結婚したいっていうのとは、違うよね。
レリーは、家族とかじゃなくて、好きな人って、いる?」
好きな人、という単語に反応したかのように、レリーは、顔を赤らめる。
それを見て、ファラは、やはりレリーに相談してよかったと思った。
年齢や感覚の近い女性の、話が訊きたい。
恋愛に手馴れた侍女たちは、愛という単語を出しただけで、妖しい笑みを浮かべ、
いずれソード様が手ほどきしてくださいますわよ、
などと意味不明な台詞を残すだけで、ちっとも参考にならない。
「いるのね?お願い、教えて!」
「教えてっていわれても、一体何を」
「あのね、その人のどういうところが好きなの?
どうしてその人が好きなんだって、自分で気づいたの?」
さっきまで、うつろな目をしていたファラは、
真昼の太陽のように、きらきらと輝く瞳になってファラの両手を取った。
「教えて!レリー!」