【天使の片翼】

頭なんて下げないで、と言いながら、ファラがレリーの体を起こすと、

レリーは、何かを思いついたように、じっとファラの顔を見つめた。


「あの、ファラ様。ちょっとお伺いしますが」


「なあに?」


「ファラ様は、さきほど、ソード様へ感じているのが、家族愛だとおっしゃいましたけど。

それがわかるということは、ひょっとして、他に心を寄せる方がいらっしゃるのでは」


「へ?」


真剣な顔をして、何を言い出すのかと思ったら。



・・他に心を寄せる方なんて。



ふと、一人の男の影が心に浮かぶ。


自分の唇を、3度も奪った不逞の輩。



・・そんなわけないじゃない!!



急に、制御できないほど暴れ始めた心臓に手をやり、なんとか沈めようとするが、

暴れる魚を手づかみしているように、どうにもできない。


焦れば焦るほど、体は熱くほてり、顔が沸騰しそうな気がする。



< 204 / 477 >

この作品をシェア

pagetop