【天使の片翼】
頭なんて下げないで、と言いながら、ファラがレリーの体を起こすと、
レリーは、何かを思いついたように、じっとファラの顔を見つめた。
「あの、ファラ様。ちょっとお伺いしますが」
「なあに?」
「ファラ様は、さきほど、ソード様へ感じているのが、家族愛だとおっしゃいましたけど。
それがわかるということは、ひょっとして、他に心を寄せる方がいらっしゃるのでは」
「へ?」
真剣な顔をして、何を言い出すのかと思ったら。
・・他に心を寄せる方なんて。
ふと、一人の男の影が心に浮かぶ。
自分の唇を、3度も奪った不逞の輩。
・・そんなわけないじゃない!!
急に、制御できないほど暴れ始めた心臓に手をやり、なんとか沈めようとするが、
暴れる魚を手づかみしているように、どうにもできない。
焦れば焦るほど、体は熱くほてり、顔が沸騰しそうな気がする。