【天使の片翼】
・・そんなはずがないじゃない。
私の相手は、ソードなんだから。
倫理観が邪魔をして、ファラは自分の気持ちを素直に見つめる事ができなかった。
今まで、あまり恋愛話に興味を持ったことなどなかったファラにとって、
恋とは、おちるものではなく、するものだと決めてかかっていたから。
「こんばんは。--ファラ王女」
「こんばんは。ソード、王子」
ぎくしゃくとする二人を見て、後ろに控えた侍女がぷっと吹き出した。
「もうしわけございません。
まるでお人形のようにお可愛らしいお二人の姿が、ほほえましくて」
崩れた表情をしたまま、その侍女はレリーに目配せをする。
邪魔をしないように、部屋の隅に控えろという意味だ。
レリーは、慌てて軽く頭を下げると、小走りで壁際に体を寄せてから、
ちらりとソードを盗み見た。