【天使の片翼】
カリプタスの隙間から覗く空は、あっという間に藍色を深めて、
夜の帳が下りた事を知らせてくれる。
気配も感じさせず、いつの間にやら侍女が灯りをともし、部屋は温かみのある橙色に包まれた。
・・あれ?
ソードの背後に目をやると、壁の方まで遮る物もなく見通せる。
いつも金魚の糞のように控えている人物が、見当たらない。
今、顔を合わせれば、おかしな事を口走りそうなので、
自分にとってはいない方が都合がいいのだが。
いなければいないで、どうしていないのかが気になる。
とにかくシドの話題には触れないようにしたい。
意識している時点で、すでにシドの事を考えている矛盾にも気づかず、
ファラは、両手をお尻の後ろで組んだ。
「あ、ええと、何か用事?」
そっけないファラの言葉に、
「え、いやその、別に」
情けないソードの返事。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
お互いの間に流れる沈黙がやけに長く感じる。