【天使の片翼】
・・変ね。
ソードってば、まだ具合悪いのかしら。
いつもの嫌味の応酬に備えようと気を張ったファラは、肩透かしを食らった。
よくよく見ると、ソードの頬には、赤みが差しているように思える。
赤い薔薇のような頬。
ファラの腕が、ためらいもなくソードの額に向かって、まっすぐに伸びる。
てっきり、はらいのけられるかと思ったが、ソードは素直にそれを受け入れた。
人目があるせいかとも思ったが。
「別に、熱なんかないぞ」
「みたいねぇ」
自分に語りかける口調は、やけに自然体で、まったく棘を感じない。
掌に伝わる熱も、特にソードの体調不良を訴えてはこない。
・・本当に、どうしたんだろう。
思い当たる節のないファラは、首をひねった。