【天使の片翼】
その様子を、幽霊のように気配を殺し、レリーは複雑な顔で眺めた。
・・ソード様。
誰に対しても、慇懃な態度を決して崩さないソードが、
ファラにはなぜか、いつも“丁寧に”つっかかる。
甘えたいのだ、とレリーは、思った。
他の誰にわからなくても、自分にはわかる。
ソードは、ファラに対しては、最初から甘えたくて仕方がないという態度を見せた。
それが、世間で言うような、愛とか恋であるかは別にして、
ソードにとって、ファラという女性が特別な存在なのだという確信は、
レリーの胸の中で日々大きく硬くなっていた。
・・仕方がないわ。
ファラ様は、とても素敵な方だもの。
でも。
・・想うだけなら、自由だもの。
いいわよね。
レリーは、誰に向けるともなく、切なそうに微笑んだ。