【天使の片翼】
エリシオンが、ホウトから去って1週間。
ファラは、表面上、それまでと変わらぬ日常を送っていた。
「ファラ様。
ソード様の遣いの者が、これを渡してほしいと持ってきたそうです」
光の差し込む明るい机上で、書き物をしていたファラが筆を休めると、
何かを大事そうに抱えたソランが立っていた。
「わぁ!すごい、何これ?」
掌にのるくらいの大きさの石。
それは、一つ一つが、まるで薔薇の花びらをかたどったような美しさ。
「バサニ石でできたもので、砂漠の薔薇と呼ばれるものだそうです。
贈り物だと言っておりました」
ちょうどお茶を運んできたレリーも、その美しさにため息をつく。
「まぁ!なんて、素敵なんでしょう。
砂漠の薔薇は、砂を含んだ茶色いものが多くて、こんな風に白いものはとても珍しいのですよ」
「・・そうなんだ」
微妙な一呼吸の間に、外を向きかけたソランのつま先が、くるりと向きを変える。
「どうかなさいましたか?ファラ様」