【天使の片翼】
その日の真夜中、ファラはそわそわと、部屋の中を歩き回っていた。
必死に持ち上げられた、はれぼったい目。
自分の気持ちを伝えて、きちんとレリーにあやまろう。
そう考えているのに、立ち去って以来、レリーは姿を見せない。
しかも、そういうときに限って、ルビド王に呼ばれたりして、
こちらからレリーの部屋を訪れる機会を逸したりする。
時間を操る神様は、絶対に天邪鬼に違いない。
早く過ぎてほしいと思えば、時は止まったように動かないし、
ゆっくり過ぎてほしいと願えば、瞬きをする間に、失ってしまう。
ルビド王と会話をしている時は前者で、その後の時間は後者だ。
一日の時間を、誰かに盗まれたんじゃないかと疑ってしまうほどの時の経過に、
ファラは、頭を悩ませた。
・・この時間じゃ、部屋を訪ねるってわけには、いかないわよね。
一人部屋ならともかく、他の大勢の侍女の目もある。
どうしたものかと思いながら、ファラは露台への窓を開けた。
空気を入れ替えて、落ち着こう。