【天使の片翼】
「え?」
目の前に広がる風景に、ファラは言葉を失った。
起伏のある砂地が、永遠にこのままではないかと思うほど、はるか先まで続いている。
曇った空は、一面に同じような灰色をしていて、遠くに横たわる大地との境目すら、判然としない。
それは、まるで真っ白な紙でできた箱の中に、独りで閉じ込められたかのような風景で。
・・夢?
ファラは、瞬きすることも忘れ、はるか先の一点を見つめた。
「ファラ様」
ふいに背後から聞こえた声に、ファラは、希望の光を感じる。
落ち着いた、かわいらしい子猫のような声。
「レリー!」
嬉しさにはじけそうな笑顔で、その声の主を振り返って、ファラは愕然とした。
レリーのさらに後ろに立っているのは。
「ソード。
・・シド」
胸の中を黒雲が横切っていく。