【天使の片翼】
暖かい湯気と、香ばしい匂いが、食欲を駆り立てる。
おかわりありますからね、というレリーの言葉につられ、
うっかり、2杯ものスープを胃に収めてしまった。
「この状況で、よくそんなに食えるな」
「うるさいわね!お腹が減ってたら、いざってときに戦えないでしょ!」
「ふん。戦うも何も、お前は僕の捕虜なんだぞ」
楽しそうな、ソードの笑顔。
事情を知らなければ、本当に、お人形のような美しさだ。
こんなときにも、女の自分よりかわいらしく微笑むその顔が、まったくもって憎たらしい。
ファラは、いつも以上に意地悪く笑うソードを横目で睨みながら、
とりあえず満たされた食欲にほっと息をついた。
少し離れたところでは、すでに食事を終えたシドが、立ったまま腕組みをしている。
その顔は、考え込んでいるようでもあり、何も考えていないようにも見える。
「あの、申し訳ありません」
一人、レリーだけが、すまなそうに頭を下げた。