【天使の片翼】
ファラは、温まって滑らかになった唇を最大限に回転させて、ソードに突っかかる。
「ちょっと、ソード!
私に復讐したいってのは、ようくわかったわよ。
父様をおびき寄せるために、私を誘拐したっていうのも、千歩譲って納得してあげる。
でも、レリーまで連れてこなくていいでしょ?
彼女は今すぐに帰してあげて?」
「あはっはっは!」
突然、聞いたこともないような笑い声があたりを支配した。
目に涙まで溜めて、人差し指を目頭に当てて拭っている。
「うるさいぞ、シド」
「いや、申し訳ありません」
シドは、掠めるような視線をファラに送ると、
彼女が見たこともない奇妙な動物に乗って、その場を去っていった。
「何よ、あれ」
「あれは、らくだという動物だ。見るのは初めてか」
ファラが指したのは、シドが笑った理由についてだったが、
ソードは、その奇妙な動物について、砂漠でもっとも便利な移動手段である事を説明した。