【天使の片翼】
「そっか。そう、だよね」
良い結果と悪い結果を予想するとき、人はなぜか良い結果を予想したがる。
第三者がみれば、明らかに悪い結果になるだろうと予測されるいくつもの事実が列挙されていても。
それらに目をつぶり、自分の期待する結果になるための理由を必死で探して。
「ごめんね、レリー」
小さな、小さな、心のつぶやき。
カルレインのしたことに対してか、それとも無神経な自分の態度に対してか。
受け取り手のいない言葉は、たんなる音の連続であるにすぎない。
砂の上に零れ落ちて、空気に溶けていく。
何か言いたげに、レリーはファラを見つめたが、ついに二人の視線が重なることはなかった。
・・申し訳ありません、ファラ様。もう少しだけ、ご辛抱ください。
ファラには何の恨みもない。
むしろ、どちらかといえば、好感を持っている。
ファラに心から謝られた時は、天と地がひっくり返るほどの衝撃を受けた。
王宮で下働きをしていたレリーにとって、
王族というのは皆偉そうで、人を踏みつけにして生きている人種だった。