【天使の片翼】
ファラの心を写し取ったかのような空は、朝日が昇っても表情を変えなかった。
カルレインがおびき出されて決着がつくまでの間、
自分は、この広大な砂漠の中に、囚われなければならないらしい。
するべきことも見当たらず、ファラは砂の上に腰をおろして、砂と戯れた。
砂をすくっては、目の高さから少しずつ落としていく。
砂は、掌の中でさまざまに形を変え、いくつもの小さな山を作り出した。
「ファラ様。お茶をお入れしましたよ」
遠慮がちなレリーの声に、ファラは、はいと返事をしてから、
「レリー。様なんて、つけなくていいわ。
私は、そんな偉い人間じゃないから」
と付け足した。嫌味ではなく、本心で。
「ファラ様」
レリーの顔は、どこかさびしそうに見えたが、それも自分がそう思いたいだけなのだろう。
手渡されたお茶は、乾いた砂の味がした。
どこかざらざらして、喉にひっかかる。
同じように椀を手にしたソードが寄って来て、ファラの隣に腰をおろした。
「もう降参か?お前なら、わーわー喚くと思ってたのに、
すっかりおとなしくなったな」