【天使の片翼】

反論するだけの元気が、ファラには残っていなかった。

元気というのは、どこから湧いてくるのだろう。

作り方を、忘れてしまった。


「シドのやつ、無事に着いたかな」


思い出したようにソードがつぶやく。


「ねぇ、ソード。シドは、彼はどうしてカナンを憎んでるの?

やっぱり、カナンを追い出されたから?」


聞かないほうがいいような気もする。

でも、やはり気になった。

シドとの出会い。

あれは、偶然なのだろうか。


自分に近づいてきたのも、熱い口付けも、何もかも。

ソードの命令で、ただ、自分を憎んでしたことなのか。


「あいつは、カナンを憎んでるんじゃない。

お前の父を恨んでいるのさ」


「父様を?」


カルレインとカナン国は、同等のものではないのか。


「なぜ?」


「簡単だ。お前の父親が、シドの幼馴染を殺したからさ」







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