【天使の片翼】
これからどうなるのだろう。
自分はこのまま殺されるのか。
そう考えるのに、実感が湧かない。
深く考える事を拒否しているのか、
自分の死の情景を描いても、微塵の恐怖も湧いてこないばかりか、まるで他人事のようだ。
・・シド。
カルレインに殺されたという幼馴染。
戻ってきてから、意識的にシドの目を避けてしまい、ほとんど会話もしていない。
確かめたい気持ちと、確かめたくない気持ちと。
相反する二つの感情が交互に自分を責めたてる。
確かめて、真実ならどうすればいいのか。
だが、確かめなければ、もやもやしたこの胸の霧が晴れることはない。
何も考えられず、空を眺める。
真っ暗の空間に横になると、この世に一人きりのような気がする。
いや、そうではなく。
この世界の全ての境界が消え去り。
人間が区分けした、空だの、大地だの、国だの、人だの、そういったいっさいのものが、
全て境なく一つになったような気がして。
自分もこの世界の一部なのだと、はっきりとそう意識する。