【天使の片翼】

「よせよ、ファラ!」


ファラの意図を察したソランが、ファラの手を制止する。


「いやよ、離して。ソラン。このままじゃ、シドが落ちてしまうわ」


岩に腹ばいになって、自分の外套をシドへと伸ばそうとするファラを見て、

ソードは、軽くため息をついた。

むちゃくちゃだが、ファラは、そういう娘だ。

昔からちっとも変わらない。


「ちょっと待ってろ。綱を持ってくる」


ソランはちらりとカルレインを見た。

何も言わないと言うことは、自分たちのすることに口出しするつもりはないということだろう。

自分の荷物から、長い綱を取り出すと、その端を頑丈な岩にぐるぐると巻きつける。

綱にいくつかの結び目をつけると、シドの方へと投げ落とした。

これで、滑ることなくのぼってこれるはずだ。

ソランは、ファラの手から外套を奪うと、彼女の体にかけた。


「体温を奪われたら、本当に死ぬぞ。

あいつを助けて、自分が死んだら笑い話にもならない」


「ありがとう、ソラン!」



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