【天使の片翼】
つり上がった眉と、噛み締められた唇。
握り締められた両の拳は、わなわなと震えている。
・・そうだ。それでこそ、ファラだよな。
魂のこもった瞳を見て、ソランは、ふっと口元を緩めた。
何も恐れず、まっすぐ突き進めばいいのだ。
ぶつかって立ち止まったときには、自分が手を差し伸べるのだから。
ソランの気持ちに応える様に、ファラの舌が勢いを増す。
「イリアさんに失礼だと思わないの?
あなたはね、彼女が命を投げ出してまで救った人間なのよ?
復讐を果たすつもりなら、格好悪くても、敵に頭を下げてでも助かりなさいよ!
命がなくなったら何にもできないんだからね。
矜持だけ高くて、なにが復讐よ」
お笑い種だわ、と最後に締めくくって、ファラの一人舞台が幕を閉じた。
雨音が聞こえているのに、なぜかしんと静まり返り、誰も言葉を発しない。
と。
「ぷっ!あっはっはっは!!」
沈黙を破ったのは、笑い声だった。