【天使の片翼】

その場にいる人々の気持ちをよんだかのように、天はさらに泣き続けた。


「よく、わかった。

答えてくれて・・感謝する」


俯いたシドが発した言葉は、誰の耳にも届かない。

ただ、その姿が、なんだかとても小さく見えて、ファラは胸騒ぎがした。


「シド!」


その呼び声に応えるように顔を上げたシドの顔を見て、ファラは息が詰まった。

笑顔。

それは、今までに見せたことのない、シドの切なそうな笑みだった。

濡れた瞳が泣いているように見えるのは、気のせいだろうか。

紫になった唇は、細かく震えているようだ。


「お願い、シド!早くあがっ」


て、の音を発する前に、シドが絞るような声を出した。


「ファラ。お前は、幸せになれよ。

育てられた恩とか、そんなものに縛られるな。人生は一度きりだ」


嫌な予感が、頭を掠める。

ファラは、不安を打ち消すように、激しく首を振った。



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