【天使の片翼】

自分の仕えた幼い主が、大きな瞳をぱっちりと開けて、自分を見ている。

気まぐれで、時に残酷だけれど、愛を知らないさびしがり屋のソード。

ファラと出会ってから、ずいぶんと変わってしまったけれど。


それが、自分自身の姿と重なって、シドは自嘲した。


「ソード王子。ルビド王に気をつけて」


「なっ!?それはどういう意味だ」


その問いには答えず、シドは、ソランへと視線を移した。


「剣の決着をつけられなかったのが残念だ」


「現時点では僕の負けですよ。カルレイン様と互角の勝負なんて、僕には無理です」


ソランの台詞に、シドは口元を緩めた。

自分の覚悟を悟って、あえて逆らう事を口にしない青年。

青臭いと笑っていたが、ファラの相手にはぴったりじゃないか。


「俺に抱かれておけばよかったって、後悔して泣くなよ」


最後に、波風くらいたててやれ。

シドは、ソランを意識しつつ、ファラを視界に入れる。


人間、次の瞬間にはどうなっているかわからない。

ソランへの、最後の警告。




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