【天使の片翼】
ホウト国を去る前日のこと、ファラは、カルレインとともにルビド王の謁見室にいた。
その入り口には、ソランが控える。
「長らく、娘が世話になりましたね」
ルビド王に笑いかけるカルレインは普段と変わらず、ファラは特に何の違和感も覚えなかった。
が。
「い、いや、その・・たいしたもてなしもできず」
一方のルビドは、人の良いおじさんの印象がすっかりなく、しどろもどろの返事をする。
・・なんだか、お痩せになったみたい。
だから、印象が違うのかしら。
なんとなく気の毒になって口を開きかけたが、先にカルレインが声を出した。
「いや、見事なもてなしでしたよ」
それまでうっすら笑っていたカルレインは、一瞬口元を引き締めて鋭い視線を投げながら、
もう、二度とないくらいの、ね、と付け足す。
とたんに、ルビドが、ひっ!と空気を吸い込むような音を発した。
・・やっぱり、どこかお悪いのかしら。