【天使の片翼】
ファラが誘拐されたことは、内密のうちに処分されることになった、
とファラはソランから聞かされていた。
王女が、他国の婚約者の王子に誘拐されたりしたら、大変な責任問題になるから、と。
そのため、ファラは、ソードたちと砂漠を観光旅行をしてきたことになっている。
途中、天候の悪化のせいで危険な目に合い、ファラたちを助けようとして、
シドが命を投げ出して死んだ。
これが、一般の人々に流れた“真実”である。
ついでに言えば、カルレインは、ルビドの祝賀会に参加できなかったことを埋め合わせるために、
同じ時期に、偶然ホウト国を訪れたことになっている。
内密とは言っても、ルビドはホウト国王なのだから、当然本当に起きた事をしっているはずだ。
だから、ソードのしでかしたことに気を病んで、こんなにも元気がないのかもしれない。
玉のような汗をかいて、青白い顔をしたルビドを見て、ファラは、そう思った。
「お世話になりました」
「道中お気をつけて」
「はい、ありがとうございます」
ルビドと交わした言葉は、たったそれだけだった。
はずなのだが。