【天使の片翼】
「いや、最初は知らなかった。
けど、内偵している侍女の一人や二人はいると思ってたよ」
「え?どうして?」
「そもそも、近隣の国の内情を調べるために、どの国にも密偵がいるもんだ。
カルレイン様は、考えもなしにファラを嫁にやったりしない。
だから、きっと報告を受けてソード王子の事を気に入ったんだと思ってた」
「そう・・なんだ」
考えもなしに、という言葉に、ファラは引っ掛かりを覚えた。
それは、自分のためを思って、という意味なのか、それとも“利用する事を考えて”という意味なのか。
自然と、視線が床に落ちた。
「レリーのお母様は、もしも自分に何かあったときは、母様を頼るようにって、母様宛てに手紙を書いていたんだって。
それでレリーは援助を受ける代わりに、ホウトのことを時々父様に連絡していたそうなの」
「なるほどね」
自分が見捨てたリリティスに援助を請うなんて、恥知らずもいいところだろうと、ソランは思った。
だが、リリティスの人の良さを知っていたからこその行動ともいえる。
もしくは、娘のために、体裁になど構っていられなかったか。