【天使の片翼】
俯いていたファラの顔が、急に持ち上がった。
振り向く気配はないが。
「ばか!」
鼻声で、怒鳴り声をあげる。
ソランは口元を緩めて、ファラに近づいた。
「知ってるよ」
「大ばか!」
「わかってる」
「私はシドが好きなのよ」
「うん」
「父様を殺そうとした人なのに、憎むことができでないのよ」
「別に、憎む必要ないだろう?」
ソランがそっとファラの腕を掴むと、緊張がほぐれた彼女の体から力が抜けていく。
そのまま腕の力に逆らわず、ファラはゆっくりと体を反転させるとソランを振りあおいだ。
涙でぐちゃぐちゃの、愛しい愛しい少女の顔。