【天使の片翼】

それぞれが皆、不安そうな面持ちでリリティスを取り囲んでいるが。


「あ、あの。

僕は、やっぱり」


壁際から、泣きそうな声を出すソードは、中でも一番青い顔をしている。

遠慮します、という最後の言葉が出せなくて、俯いた。


それは、レリーとソランにしても同じことで、

どうしていいかわからず、隠れるようにその場に立っている。


産婆と侍女を除けば、出産に立ち会うのは家族、それも通常は母親や姉妹といった女性なのだ。

夫や息子がいるだけでも異例なのに、何の関係もない3人が同じ部屋の片隅にいるのだ。

カルレインの命令で。


「いいから、最後までちゃんとここにいろ。

別に、怖けりゃ目をつぶっていればいい。

なに、すぐに終わるさ」


カルレインは、軽く片目を瞑って戸惑う彼らに視線をやる。


出産に危険が伴うのは百も承知ではあったが、わざと軽く応える。

子どもたちを安心させるため。リリティスを落ち着かせるため。


そして何より、自分に言い聞かせるために。


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