【天使の片翼】
不意に、リリティスのうめき声を耳にして、ソードははっと我に返った。
「リリティス!」
「頑張って、母様!」
ある者は、リリティスの背をさすり、ある者は手を握り、そしてある者は声をかけて励ました。
綺麗な顔をゆがめて唇を噛み締めるリリティスの姿は、本当に苦しそうに見える。
子どもを産むことが、そんなにも苦痛を伴うことだということを、ソードは初めて知った。
やがて陣痛がおさまると、何気ない会話が始まる。
しばらくすると、リリティスが痛みを訴える。
そんな風にして、緊張と弛緩を繰り返し、いつの間にかかなりの時間が流れた。
陣痛のおきる間隔は徐々に短くなっており、リリティスの痛みも増しているようだが。
・・くだらない。
窓の向こうが、わずかに白み始めているのを見て、ソードはため息をついた。
結局一晩の間、眠りもできずこうして家族ごっこにつきあわされたのだ。
その時。