【天使の片翼】
リリティスが、今までになく甲高い悲鳴を上げた。
「だいぶ、おりてきましたな」
白髪の混ざった頭で、産婆がしゃがれた声を出す。
「産まれるのか?」
「まだです。
リリティス様。ご自分の楽な姿勢をおとりください。
ですが、まだいきんではなりませんよ」
すでに、声を発するのも苦しいのか、リリティスは返事もせずにはぁはぁと肩で息をしている。
額には、玉のような汗。
「ううっ!」
リリティスは、寝台の柱にしがみつくと、膝立ちするような姿勢になってうめいた。
「しっかりしろ。もう少しの辛抱だぞ」
カルレインの言葉に少しだけ微笑んだが、すぐに顔を歪めて苦しそうに俯く。
ソードは知らないうちに両手を強く握り締めていた。
どうでもいいと思っていたリリティスから、視線をはずすことができない。