【天使の片翼】
わずかな時間が、永遠のように感じられた。
寝台の上では、リリティスのが絶え間なく声をあげている。
「いいですよ、リリティス様。私の合図でいきんでください」
いよいよ、産まれるのだ。
緊張が、部屋中を包み込む。
その横では、ルシルが沸かした湯と清潔な布を大量に用意して控えている。
「うう~!」
「その調子です。はい、もう一回」
自分まで一緒になって力が入っていることに気づいて、ソードは目をそむけた。
・・ばかばかしい。どうして僕が、こんなところにいなくてはいけないんだ。
ソードは体ごと、反対を向いて床を眺める。
赤ん坊は、まだ産まれない。
何度目かのリリティスの叫び声を聞いたあと、産婆の緊迫した声が耳に届いた。
「これは、もしや!」
「どうした?」